活動レポート

地域と連携して取り組む食育活動の主体は学生たち!

事業名:地域における食育活動プロジェクト
団体名:学校法人 実践女子学園実践女子大学

地域での取組:共食の場での食育食文化の保護・継承農林漁業体験

実施都道府県:東京都、岐阜県

食育基本法以前から食育活動に取り組んできた実践女子学園

近代女子教育の先駆者である下田歌子氏の「女性が社会を変える、世界を変える」という建学の精神のもと、明治32(1899)年に創立され、令和6(2024)年5月には学園創立125周年を迎える実践女子学園。中学から大学院までの一貫した教育組織を持つ女子教育機関として、これまでに17万人の卒業生を送り出してきた。
食生活や栄養学を学ぶ学科もあり、その学びに資する食育に長年取り組んできた歴史がある。近隣の農家に初めて学生の農業体験を依頼したのは、平成15(2003)年。同じ頃から、学生が小学校や保育園の給食前に紙芝居などで食の大切さを伝える「給食交流」も始めた。これらは「食育基本法」の施行からさかのぼること2年前のことである。食育という言葉そのものは明治には使われていたものだが、平成15(2003)年当時はまだ一般的に知られてはいなかった。その後の「食育基本法」の施行を経て、以来、地域での信頼関係を深めながら、新たな食に関する課題にも対応しつつ、地域と連携した食育を実施・継続している。今回の事業内容は、これまで実践女子大学が取り組んできた食育活動の経験・知見を活かして企画された。

学生たちが工夫して作る紙芝居や食育カルタをはじめアイディア豊かな教材はこどもたちから大好評!

大学のカリキュラムや課外活動として食育を推進

本事業の背景には、「第4次食育推進基本計画」の様々な数値目標を達成するためには、地域のこどもから高齢者に至るあらゆるライフステージにおける食育に関する意識の向上、特に若い世代の食に関する意識の向上と食育に関する取組の強化が必要との考えがある。そこで、共食の場における食育活動、食文化の保護・継承や日本型食生活の実践のための取組支援、栄養バランスに配慮した食生活の取組支援、農林漁業体験の機会の提供の目標達成に寄与する取組を実施した。
具体的な内容は、農業従事者や食文化の継承者による講座の開催、こども向けの料理教室や食育講座と共食の場の提供、郷土料理の調理や地域農産物を利用したレシピ開発、こどもや高齢者のための献立の開発、生産農家や市民と連携した農作業体験、農作物のこども食堂への提供や学内での使用などである。この他にも、食に関する調査やリーフレットの制作、実施対象地域の食事バランスガイドの作成も企画。これらを大学のカリキュラムや課外活動として、大学がある東京都日野市を中心に、学祖の下田歌子氏の故郷として連携している岐阜県恵那市でも実施した。

大学生向けに深い話も聞けた農業体験

本事業では、学生が中心となって取り組むことで、若い世代の食に関する意識の向上と食育に関する取組を強化している。農業体験は、例えば8月はブルーベリー、9月はゆず、ぶどうやなし、1月はいちご、また、さつまいもやトマトの栽培など、様々な農家や地域住民の方々にご協力いただき、学生たちが直接生産者の声を聞き、栽培から収穫などの作業に参加した。さらに、大学構内でもトマトやナス、ピーマンなどの野菜類やさつまいもなどの栽培もしている。
9月に行った日野市で数百年前から続く農家での農業体験では、農作物の育て方や収穫方法だけでなく、品種の変化や新たな病害虫の発生といった地球温暖化の影響、都市農業の難しさ、若手農家の意気込み、相続など現代の農家が抱えている課題、農作物をこどもたちに美味しく食べてもらいたいという思いなども聞かせていただいた。スーパーで売られている食品の値段を高いと感じるか安いと感じるかは、生産過程を知っているかどうかで大きく変わる。食品が消費者の手に届くまでの生産現場の実態や苦労、その熱意などを、知識として学ぶだけでなく生産者から直接聞き、自らの農作物の栽培体験を通して目で確かめることは、食を専攻する学生たちにとって大きな学びとなる。そして教員もまた、新たな知見を得ることができ、実地教育の大切さをこの企画で実感している。

学生たちが主催した地域における料理教室には、小学生から大人までが参加

食育は世代や組織を超えて長期的に取り組むべきもの

年々農地は減少しているものの、住宅地と隣接して野菜や果樹などを栽培する都市農業が盛んな日野市。40年前に栄養士の発案により地域の農産物を学校給食に取り入れるようになった。令和6(2024)年2月には学校給食での地産地消開始から40周年を記念した「第20回都市農業シンポジウム~“ひの”を学校給食で届けるために~」が日野市主催で開催された。日野市では、みんなですすめる食育条例も制定されており、地場産農作物を学校給食で25%以上を提供するという数値目標がある。この数値目標を含めた特色ある安全で美味しい学校給食を提供するためには、学校、農家、自治体、JA、NPO法人、市民など多くの人々の支援が必要であり、各方面で独自の給食の在り方を考えながら継続してきている。
このように、昔から多くの農産物の産地であり、それらを食育に活かす意識が高い土地柄に魅力を感じ、移住してくる子育て世代もいるという。この地域特性も今回の事業のバックボーンとなっている。「食育は1回のイベントで終わりにしていいものではない。継続することが大切である」と話すのは、今回の事業を企画した実践女子大学の白尾美佳教授。食育は世代に関わらず各ライフステージにおいて絶え間なく継続していく必要があり、学校だけ、農家だけではなく、地域全体で目的意識をもちながら連携し、地道に取り組んでいくことが大切だと教授は訴えている。

実施主体:学校法人 実践女子学園実践女子大学
〒191-0061 東京都日野市大坂上4-1-1
公式サイト:https://www.jissen.ac.jp/index.html