活動レポート
全国7ブロック10市町で実施された食育体験会
地域での取組:共食の場での食育食文化の保護・継承農林漁業体験
二つの団体が強みを活かし、全国規模の食育プログラムを実現
こどもたちの心身の成長にとって勉学以外の経験を積むことや幅広い世代との交流ができる地域活動はとても重要である。しかし、近年、こどもたちのライフスタイルや家庭の価値観が多様化し、学校行事やPTA活動などの地域活動への関心は次第に薄れつつある。特にコロナ禍以降、その活動はますます縮小している。そうした状況の中、全国各地のPTAと地域の民間企業や各種団体をつなぎ、地域活動を活性化するとともにPTA活動の充実および学校支援を行うことを目的に、令和3(2021年)に一般社団法人地域創生応援団は設立された。現在は、公益社団法人日本PTA全国協議会と業務委託を結び、各地のPTAと連携しながら、様々な地域活動に取り組んでいる。
本事業を実施する上では、「食育」に深い知見を持つ株式会社日本教育新聞社と連携のもと、全国規模での食育プログラムを実現。多様な情報やデータを持つ日本教育新聞社が企画事務局を、全国のPTA組織とのつながりと、高い機動力を備えた地域創生応援団が実施主体を担当することで、全国7ブロック10市町に及ぶ広域での食育体験会を具現化した。
収穫から調理、共食までを一体のものとして企画する
今回のプログラムは「第4次食育推進基本計画」に定められる「地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やす」「地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝える国民を増やす」「農林漁業体験を経験した国民を増やす」「栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす」「産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす」の5項目を念頭に置いた。それぞれは個別の事象ではなく、互いに密接な相関関係があり、各項目を一体のものとして実施することで、それぞれの目標値の向上が期待できると考えた。そこで本事業で実施したのが、その地域ならではの農林水産物を収穫する現場に立ち合い、収穫したものを伝統的な調理法などによって調理し、最後にみんなで食をともにするという、一連の食育体験会である。体験会にはこどもたちだけでなく、保護者にも参加してもらうことで、知識として理解するだけでなく、毎日の食材購買の意識や栄養バランスに配慮した食生活に変化していくことを期待した。この体験会は、北海道(北見市)、東北(福島県いわき市)、関東(千葉県旭市)、東海北陸(岐阜県瑞穂市、神戸町、福井県福井市)、近畿(兵庫県姫路市、和歌山県田辺市)、四国(徳島県小松島市)、九州(大分県佐伯市)の各地域の食材をテーマに開催された。
地域の参加者属性や食材に合わせた食育体験会
例えば、令和5(2023)年12月に福島県いわき市で開催された食育体験会のテーマは「お魚」。11組23名の親子が、まずはいわき市中央卸売市場を見学し、様々な生きている魚に触れた。その後、漁業関係者の指導のもと、サバを三枚おろしにして、魚料理(サバの竜田揚げ、ホッキ貝のみそ煮)にも挑戦。最後は、自分たちで作った料理をみんなで味わった。それぞれの体験の合間には、食の現場ならではの苦労話や食事の作法の話も聞けて、有意義な1日を過ごすことができた。収穫し、調理し、みんなでいただくことを一連の流れで体験する中で、こどもたちも命や食の大切さ、それを支える人たちへの感謝を感じていた。
今回のプログラムは全国で実施するため、地域によって参加するこどもの年齢層や手に入る食材が異なる。従って、運営側では事業内容の大枠だけを決め、プログラムの詳細は各地域のPTA関係者、協力いただいた生産者や調理学校の講師の皆さんにお任せすることにしたが、どの地域も熱意をもって取り組んでもらうことができた。教育関係者だけでなく、地域全体に食育の重要性が浸透していることが分かった。
「食育」は地域コミュニティをつなぐ大切なテーマ
今回はこどもたちだけでなく、保護者にも参加してもらったが、参加後のアンケートでは「地元の食材を選ぶようにしたい(増減度177.8%)」「栄養バランスをよく配慮して作りたい(増減度154.5%)」と回答する人の割合が、参加前に比べ大きく改善が見られ、今後の食生活における行動変容が期待される。実際に大分県佐伯市では、地元のヒラメの5枚おろしなど、大人でも初めての体験が多く、保護者もたくさんのことが学ぶことができた。特にこどもと一緒に体験できたことが、帰宅後も同じ話題を共有できると評価する声が聞かれた。
また、参加したPTA関係者も、今回の食育プログラムを通して改めて地域コミュニティの大切さを確認できたと評価する。今後のPTA活動は、限られた関係者だけで行うのではなく、地域住民や地元企業、各種団体と積極的につながる重要性を再認識すると同時に、多くの人々が関われる「食育」は、地域を盛り上げる大切なテーマであることを実感した。
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