活動レポート

こどもたちの創造力を活かしたばら寿司で地域課題を解決

事業名:食の宝庫をめぐって、未来のばら寿司にチャレンジ
団体名:株式会社瀬戸内海放送(KSB)

地域での取組:共食の場での食育食文化の保護・継承農林漁業体験

実施都道府県:岡山県、香川県

「じぶんで考える」を刺激するばら寿司づくり

地域に素晴らしい生産者がたくさんいること、そして、日本中に誇れる素晴らしい食材がたくさんあることをこどもたちにもっと知って欲しいと言う思いから、瀬戸内海放送(KSB)では、令和元(2019)年から「じぶんで考える食の学校」という食育プログラムに取り組んできた。当初からこだわってきたのが「じぶんで考える」と言う視点で、ただ地元の食材を触れるだけでなく、そこから「じぶんで考える」ことで、未来を変えていくような大人になって欲しいと考えていた。
こどもたちが前向きに考えるには、こどもたちの創造力を刺激する食材やメニューでなければならない。そこで、本事業では、岡山県、香川県の両県で愛されながらも、独自の食文化を育んできた「ばら寿司」。岡山県ではおめでたい時に食べられることが多く、最近では「晴寿司」という新たなブランディングが県をあげて始まっている。また、香川県は全国的に糖尿病の発症率が高く、讃岐うどんと一緒に食べられることが多いばら寿司も含め、食生活全般に健康的な工夫が求められている。それぞれの地域課題に応えながらも、様々な食材と相性が良い点や見た目の彩りが楽しい点など、ばら寿司はこどもたちのやる気を引き出す格好のテーマとなった。

香川での初日のキックオフ。各チームに分かれて「食と健康」の議論

地元の農林水産業から学ぶ食の循環

本事業では、岡山県・香川県でそれぞれ40名の親子を招いて実施された。まずはキックオフミーティングで地域の食の課題やばら寿司の歴史を学び、その数日後にこどもたちだけで二泊三日のプログラムに参加し、瀬戸内の海と山を訪ねて農林漁業作業を体験。オリーブの収穫や醤油づくり、タイやチヌのさばき方を習っての食べ比べなど、ばら寿司作りのヒントとなる多くの食材に触れた。
初めての体験もさることながら、瀬戸内海で取れた牡蠣の殻を肥料とした米作りや醤油の搾りかすを使った長命草栽培など、地域の中で食の「循環」が実現されていることに驚くこどもたちが多く、普段からSDGsについて学んでいることが背景にあることが分かった。
そして、体験プログラムと並行して、学びと体験をもとに、岡山県では「ハレの日に食べる晴寿司」を、香川県では「誰かを健康にするカラフル寿司」を考えるグループワークを実施。和食のミシュランシェフの林亮平シェフをはじめとする地元の寿司職人や大学生などのサポートのもと、こどもたちが4グループに分かれて未来のばら寿司のアイデアを調理・実現した。

潮風の強い小豆島でも栽培可能で、栄養価の高い長命草収穫を体験

理屈ではなく、こどもたちの想像力を刺激するプログラム

あるグループのばら寿司は、家族との楽しい旅行をイメージし、日本地図を模した重ね寿司。また別のグループは両親の結婚記念日に合わせていつまでも仲良くいて欲しいという願いをばら寿司に込めるなど、こどもらしい発想の溢れる作品ばかりだった。
「最初はトッピングの具材がユニークなものが生まれる程度だと思っていたら、全然違っていました。どれも私たちの想像を超えるクリエイティビティ溢れるばら寿司でした」とは、今回の企画を担当したKSBの安藤公紀さん。安藤さんはその要因を、理屈で説明するのではなく、こどもたちにスッと受け入れられる入口をグループワークの初日に組み込んだことだったと振り返る。例えば、いきなりばら寿司のレシピを考えるのではなく、まずは「自分のハレの日(楽しかった時のこと)を思い出そう」「誰に健康になって欲しいのかを考えよう」といった身近な“コト”から考えることを提案した。また、林シェフが「理屈で栄養バランスを考えるのではなく、食材の色数が栄養の数、色を増やしてカラフルにしたら、それは健康に良いということ」とディレクションしてくれたことが、こどもたちの想像力を、健康という価値に向かって一気に広げてくれた。

岡山4グループが考えた未来のばら寿司

ここから地域に広がるばら寿司の輪

クライマックスである未来のばら寿司のプレゼンテーションと実食には、2日ぶりに保護者たちも参加。初日のキックオフではバラバラだったこどもたちがまとまり、仲間と協力しながらテキパキと調理する姿に多くの保護者が驚いたという。身近なコトから発想し、自分で考えて、みんなで作り出す、というプロセスがこどもたちを成長させてくれた。
今回の食育プログラムを通して、改めて地域の伝統的な食文化を継承・活性化するには、伝統食の守るべきところは継承しながら、社会課題や食文化の変化に合わせて、創造力が生み出す新しさを加えていくことが重要だということを、今回のこどもたち40人が教えてくれた。
KSBでは、今回、林シェフが考案したばら寿司のレシピを地元のこども食堂や学童保育、管理栄養士を志す大学生に共有し、各地で新しいばら寿司文化を育てていきたいと考えている。また、今回の様子は特設サイト(https://www.ksb.co.jp/shokuiku/barazushi/)で詳しく紹介する他、2月にはテレビ番組「ばら寿司食べたくなるTV」を放送した。ばら寿司の輪は、今後ますます広がっていくに違いない。

2月放送の「ばら寿司を食べたくなるTV」ロゴマーク

実施主体:株式会社瀬戸内海放送(KSB)
〒761-8064 香川県高松市上之町2丁目1-43
公式サイト:https://www.ksb.co.jp/shokuiku/barazushi/