活動レポート

酪農から製造、食事まで一つの流れとして学び体験する

事業名:明治みるく体験ツアー
団体名:株式会社 明治

地域での取組:共食の場での食育農林漁業体験

実施都道府県:北海道、愛知県

食育活動のパイオニアとして

創業精神の一つに「栄養報国」を掲げ、「食品の提供を通じて社会に貢献する」という考えを現在まで大切に受け継いでいる株式会社明治。お客様の「ウエルネス」に貢献することを使命として、昭和30(1955)年に工場見学、昭和48(1973)年に料理教室を開始し、お客様とのダイレクトコミュニケーションを図ってきた。
平成17(2005)年の食育基本法の制定を契機に、平成18(2006)年からは出前授業・食育セミナーを行う専門組織を立ち上げ、乳・カカオ豆などを題材に、栄養知識のみならず生産者の努力や苦労、製造工程などの学びを通して、食に対する興味や感謝の念の醸成に取り組んでいる。小学生からシニアまで幅広い世代を対象にした30以上のプログラムが用意されており、令和4(2022)年度の実施状況はセミナー回数4,700回、受講者数25.4万人。平成18(2006)年からの累計は198万人にのぼる。

工場見学ではメモを取りながら説明を聞く保護者の姿も印象的

乳製品製造の川上から川下までを知るツアーを企画

本事業では、明治ならではの食育体験イベントとして、生乳が牛乳・乳製品になり、食卓に並ぶまでを学ぶ日帰りツアーを企画した。開催場所は、北海道と愛知県。明治の契約牧場、工場である「明治なるほどファクトリー」、協力いただいたレストランでの様々な体験を通して、自然の恵みや命の尊さ、食の大切さを感じながら酪農や乳製品への理解を深めることを目的とした。
開催する工場のWEBサイトの他、新聞の生活欄、テレビ番組、地元スーパーなどでの告知から応募した参加者は、乳製品の川上である牧場での乳しぼりなどを体験し、商品が生産される工場を見て、食育セミナーで成長期に必要な食事や栄養素を聞いて、自分で作ったバターや乳製品を使った昼食を食べて学ぶ。これら一貫した体験学習によって、「第4次食育推進基本計画」のうち、「農林漁業体験を経験した国民を増やす」「栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす」「産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす」という3点の目標達成につながると考えた。
また、コロナ禍で様々な体験の機会を失っていたこどもたちに、本物に触れて楽しく学び、思い出に残る場を提供していきたいという思いを込めたツアーとした。

明治の管理栄養士による「成長期に必要な食事と栄養素」を学ぶ食育セミナー

こどもたちに芽生えた食への関心と感謝の思い

10月に実施した「明治みるく体験ツアーin北海道十勝」には、近隣に住む小学生と家族、13組33名が参加。「明治なるほどファクトリー十勝工場」でナチュラルチーズや生クリームの製造工程を見学し、食育セミナーで成長期に必要な食事と栄養素について学んだ後に、バター作り体験と試食、食材カードを使って栄養の役割を考えながら家族と食事をとった。さらに、牧場に移動するバス内で乳牛や酪農家の仕事について事前学習し、到着後は乳しぼりやミルクやりを体験。フリーストール牛舎とミルキングパーラーも見学した。
こどもたちからは、「牛乳やチーズがもっと好きになった」「スーパーで売られている食品がどのように作られてきたのか考える必要があると思った」「料理を残さず食べるようにしたい」「牛が大きくてびっくりした」などの声が聞かれ、本物に触れ、自然を感じる体験と、専門家から直接話を聞いたことで、普段何気なく食べている食への関心や感謝が芽生える機会になったと感じられた。また、家族と一緒にバターを作って食べ、食育セミナーで学んだ3色食品群の役割について話し合いながら昼食をとることで、「共食」の楽しさや大切さも実感してもらえたと考える。
こどもたちに同行した家族からも、「この体験をきっかけに、食に対する感謝の気持ちをもってもらいたい」「普段食べている乳製品が多くの人の努力によって食卓に届くと知って、将来の仕事に対する糧になれば」「1日で生まれたての子牛の見学から乳製品を食べることまで体験できて、流れをよく理解できた」「食育セミナーを受けて、いつもの食事に足りない栄養素に気づくことができた」などの感想が寄せられた。

生クリームをシェイカーで振ってバターを作る。「美味しくできた!」

来年度以降の継続的な開催を検討

本事業で実施した様々なプログラムは、明治がこれまでも実施してきたものではあるが、それぞれ個別に行われており、1日かけて一つの流れとして実施したのは初めての試み。食育を通じた社会貢献という同じ目標に向けて社内の様々な部署が連携し、力を合わせて実現できたことも大きな成果だった。もちろん、パートナーである提携牧場やレストランなどの前向きな協力も欠かせないものである。座学と体験を組み合わせ、参加したこどもたちにとって記憶に残る深い学びとなったことにより、将来やりたいことを見つけたり、自分の生きる意味を考えたりするきっかけとなり、資質や能力の育成、キャリア形成にもつながることを願っている。
乳業メーカーの使命は、酪農を支え、生乳の大切さを世の中に伝えていくことと明治は考える。そのためには、今回のスキームをどう発展させながら日本全国に広げ、持続可能なものにしていくかが今後の課題である。今回の企画を総括し、改善していくとともに、来年度以降も様々な地域のお客様に対して、体験型食育ツアーが開催できるよう検討したいとしている。

「明治みるく体験ツアー」参加者の笑顔。この体験を全国のこどもたちへ

実施主体:株式会社 明治
〒104-0031 東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン
公式サイト:
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/events/report/milktour/
https://www.meiji.co.jp/meiji-shokuiku/